〜リトバスSS 放課後の屋上で〜 (220000HIT記念SS)




「理樹くん、今大丈夫?」
「うん、大丈夫だけど」

 次の移動教室の準備をしていたら、小毬さんが僕に話しかけてきた。

「今日の放課後、ちょっと付き合ってもらっていいかなぁ?」
「え、まぁ、うん。別に構わないけど………」
「ホントっ!? よかったぁ〜、ダメって言われたらどうしようかと思ったよ〜」

 心の底から安心したかのように小毬さん。そんなに大げさな反応することは無いと思うけど、まぁ、
小毬さんらしいかな。

「で、何か買いたいものでもあるの?」
「それは秘密だよ〜♪」

 秘密ねぇ。前回のカップル限定のパフェ(今日だけの恋人を参照)みたいなことなんだろうか?
うーん、でも立て続けでそんなハプニングめいた事は考えづらいってゆーか………

「りきくん?」
「え、あぁいや。じゃあ放課後、何処で待ってればいい?」
「えっと。いつもの場所に来てくれる?」

 いつもの場所………あそこか。

「分かった。じゃあ、放課後にね」
「うん。ありがと〜理樹くん」
「お礼を言われるほどじゃないよ」

 小毬さんが手を振りながら去って行く。どうにもその仕草が物凄く似合ってるなぁ、と思ってしま
うのは僕だけだろうか。

「はわっ!?」


 ズデンッ!!!


 あ、コケた。なんか凄く華麗さが………って、分析してる場合じゃないよ僕っ!!!

「小毬さんっ!」
「あ〜う〜、りきく〜ん」
「だ、大丈夫?」
「だいじょうぶ〜」

 そういいながら、ふらふらと自分の席へと戻っていく。うーん、凄く不安なんだけど、まぁ怪我も
なかったみたいだし、大丈夫か。


 さーてそろそろ移動しないと………


「随分と仲の良いことだな」
「うわあっ!!??」


 来ヶ谷さんがいた。僕のすぐ横に。えっと………いつからそこにいたんだろう?

「はっはっは♪」

 えっと………まさか僕の考えてることが分かる………そんなわけは………

「女というものは、秘密の一つや二つは持っているものだよ理樹君」

 ……………………。

「………むぅ、そこで反応してくれないと困るじゃないか」
「いや、もうなんか今更ってゆーか………」
「ふっ、まぁいい。そんなことより、だ」

 来ヶ谷さんがある方向を見る。釣られてそこを見てみると………


「……………(ジ〜〜〜〜〜〜〜ッ)」


 ………鈴がいた。僕のほうをずっと見つめていた。それも無表情で。

 えっと………僕何も悪いことしてないよね?


「ま、せいぜい頑張ることだ。はっはっは♪」

 頑張るって………何を?




―――――――――




 さて、あっという間に放課後となった。


 そろそろ小毬さんのいる、あの場所へ――――――


「理樹」
「えっ?」

 振り返ると、鈴が立っていた。なにやら表情が凄く真剣だ。

「こまりちゃんのところに行くのか?」
「う、うん。そうだけど………」
「二人っきりで出かけるのか?」
「た、多分ね………」
「……………」


 な、何だろう? 鈴から何か威圧感みたいなものが………


「理樹」
「な、なに?」
「こまりちゃんのことが好きなのか?」
「え………ええええっ!?」

 な、何言ってるのさ鈴ってば!

「最近理樹はこまりちゃんと一緒にいる。あたしのことは放っといてでも、一緒にいたいのか?」
「いや、別に鈴の事を放ってるわけじゃ………」
「じゃあ、なんであたしとは一緒に遊んでくれないんだ?」
「なんでって………いつも野球とかで………」
「でも、二人っきりで遊んではくれない。そんなにあたしのことが嫌いなのか?」
「そんな………鈴の事を嫌いになるわけないじゃないか」
「ならなんであたしとは遊んでくれないんだ!?」

 えーと………つまり鈴は僕と遊んでないから拗ねている………ってことで良いんだろうか?
うん、多分そうなんだろう。


 考えてみたら、最近小毬さんの用事とか、野球の練習漬けとかで、鈴とゆっくり遊ぶ暇もなかった
ような気がする。それで拗ねてしまうほど、鈴は僕と遊びたがっているってことなんだ。

 そんなに僕と遊びたいだなんて………なんか、嬉しいな。


「えと、鈴」
「なんだ?」
「その……………」




―――――――――




「理樹くん………遅いなぁ〜」

 今日は理樹くんと屋上で待ち合わせている。けど、理樹くんはまだ来ない。もう来ても良さそうな
のに………

 ハッ! も、もしかして………何か事故に巻き込まれたんじゃ………それで理樹くんは来たくても
来れない状態になっちゃった!? そして理樹くんは苦しみながら………


「うあああああああんっ! 理樹くん死んじゃいやぁだぁああああああああっ!!!!」
「何を騒いどるんだ?」
「ふぇ?」


 えっとぉ………ここにはわたししかいないよね? そんな場所に別の誰かがやってきた。けどそれ
は理樹くんじゃない別の誰かさんなんだよね? えっとぉ、それってつまり………


「う、うおおおおわわわああああああっ!!??」
「こ、小毬君?」

 はわわわわわわわわわわわ、ど、どうしよう〜〜〜〜〜〜〜っ!? はっ、そうだ。今ならまだご
まかせるよねっ! よ、よぉ〜し!


「あ、ああああああああのあのあのあのっ、こ、これは別にその………いつもこうして出ているわけ
じゃなくて、別に理樹くんと約束してたからとかそんなのでもなくて、き、今日はたまたま……そう!
たまたま気がついたらここにいたんですっ!!!!」


 よ、よしっ………これで何とかごまかせ………

「とりあえず落ち着いたらどうだ、コマリマックス」
「ふ、ふええぇぇぇぇぇんっ! やっぱり誤魔化せなかったあぁ〜〜っ………あれ?」

 いま………コマリマックスって………

「………はれ? ゆいちゃん?」
「いや………いい加減ゆいちゃんはやめろと………まぁ、いい」

 ゆいちゃんがなんだか頭を抑えてた。うーん………具合でも悪いのかな?

「ところで、小毬君」

 あ、なんかいつもの顔に戻った。やっぱり大丈夫だったのかな?

「理樹君と待ち合わせをしていたみたいだが?」

 え………ゆいちゃん今なんて?

「ふむ………理樹君はまだ来てないようだな………どうした?」
「ゆいちゃん………なんで知ってるの?」
「何がだ?」
「わたしと理樹くんがここで待ち合わせしてたってこと………」

 わたしが理樹くんと話したときは二人っきりだったはず。ゆいちゃんには話してないはずなのにど
うして?

「なに、簡単な話だ。まだ人が残っている教室内で堂々と約束事を話してしまってたらな」
「あっ………」

 そ、そういえば………だからゆいちゃんにも………

「……………よぉしっ!」
「ん?」
「聞かなかったことにしよう、そして見なかったことにしよう!」
「……………………」
「聞かれなかったことにしよう、そして見られなかったことにしよう!」

 うん、これで万事かいけ………

「無理だな」

 ……………………。


「う、うああああああああんっ! やっぱり聞かれてたし見られたああああああっ!!!」
「あぁ………かわいい」


 うぅ………なんでこーなっちゃうんだろ? わたしはただ理樹くんに………


「っと、本題に入るのを忘れるところだったな。少年と待ち合わせをしていたとのことだが………」

 ゆいちゃんがある場所をチラッと見る。そしてクスリと笑った。

「なるほど………そういうことか」
「ふぇ?」

 何だろ? 何かゆいちゃん楽しそう………

「少年を呼んだのは、ソレだろう?」

 ゆいちゃんが指差した物。あ〜う〜、確かにその通りなのです。理樹くんを呼んだのはコレが全て
なのです。

「ふむ………ではおねーさんは退散するとしようか」
「え、でも………」
「気にするな。それよりも、邪魔をして済まなかったな。今度はおねーさんも混ぜてくれ」
「えっと………うん、ゆいちゃんなら大歓迎だよ〜♪」
「いや………だからゆいちゃんはやめろと………」

 ゆいちゃんが顔をしかめながら屋上から出ていった。

 それにしても、なんでゆいちゃんは“ゆいちゃん”って呼ばれるのがイヤなのかな? ゆいちゃん
カワイイから、凄く似合った呼び方だと思うのになぁ………




「一応説得して見るけど、ダメだったら諦めてよ」
「むぅ………仕方が無いな」




 あ、理樹くんが来たみたい。でも………誰かと一緒にいる…のかな?




――――――――――




「ゴメン、小毬さん。本当は、こんな予定じゃなかったんだよね?」
「気にしない気にしない。それに、鈴ちゃんなら大歓迎なのです♪」
「ありがとう、こまりちゃん」
「えへへ♪ それよりもどんどん食べてね♪」


 小毬さんと一緒に待っていたのは、ホール型のケーキだった。何でも、知り合いから貰ったものら
しい。貰ったのは良いけど一人で食べきれないから、この場所を知っている僕に声をかけた、という
わけだそうだ。


「あれ? 鈴ちゃんどうしたの?」
「………やっぱり、あたしがいたら迷惑だったか?」
「ふぇ? どういうこと?」

 鈴の問いかけに小毬さんはハテナマークを撒き散らしていた。

「だって、本当は理樹と二人で食べる予定だったのに、あたしが邪魔してしまった。だから迷惑だと
思ったんだ」

 確かに、鈴がいなければ小毬さんと二人で食べることになってただろう。けど、鈴が来たから迷惑
だとか、そんなことは決してないはず。ましてや、小毬さんがそんなことを言うはずがない。

「そんなこと無いよ、鈴ちゃん」

 ほら、やっぱり鈴の考えすぎじゃ………



「鈴ちゃんの気持ちはよぉーーっく分かってるから♪ むしろ、わたしの方こそ抜け駆けしそうにな
っちゃって、ゴメンね?」
「こまりちゃん………」



 ………へ? あれ? 小毬さん………一体なに言ってるの? まぁ、鈴のことを迷惑だと思ってな
いことはわかるんだけど、抜け駆け? 鈴の気持ち? てゆーか、小毬さんどうして謝ってるの?

「……………こまりちゃんも、やっぱりそうなのか?」
「うん………そういう鈴ちゃんも………でしょ?」
「……………(コクリ)」

 えと………なんか完全に僕って置いてけぼりされてる? まぁ、二人でしか分からないこともある
んだろうから、別に………

「理樹っ!」
「えっ、なに? どうしたの、鈴?」
「………あ」
「あ?」


 鈴がケーキにフォークを突き刺し、そして………



「あ、あーんだ………///」



 え………その、鈴?

「理樹………恥ずかしい」
「え、あ、その………(あむっ)」

 顔が真っ赤になっている鈴。僕も何処と無く恥ずかしい気持ちになり、ドモりながらも鈴が差し出
したケーキを食べた。

「う…うまいか?」
「う、うん………」
「そうか………」

 うわぁ………なんか凄く恥ずかしくなってきた。

「ほわぁ〜、鈴ちゃんやるねぇ〜。それじゃあわたしも………」

 へ? わたしもって………小毬さん?



「はい理樹くん、あ〜ん♪」



 こ、小毬さん? 一体………どうしちゃったのさ? 今までこんなこと、しなかったよね?

「理樹くん」
「は、はいっ!?」
「……………食べちゃいなよ、ゆー///」

 顔を赤くしながらも、可能な限りいつも通りに話そうと頑張っている小毬さん。きっと、かなり恥
ずかしいんだろうなぁ………

 まぁ、かく言う僕も凄く恥ずかしい………



「むぅ………(ぴとっ)」
「り、鈴?」

 鈴が僕に密着してきた。僕の目の前に鈴の髪の毛。風が吹くたびに“チリン”と鈴の音が鳴る。

「えへへ………それじゃあわたしも〜(ぴとっ♪)」

 小毬さんも笑顔のまま、僕に密着する。えっと………コレは一体どういうことなんでしょうか?


 あーもう、何か頭の中が真っ白になってきた………


「こまりちゃん」
「なに、鈴ちゃん?」

 鈴がぎゅっと僕の腕を掴むと………

「絶対に………負けない」

 鈴が強く宣言するかのように言う。………えっと、負けないって………どういうことさ?

「わたしだって………望むところだよっ♪」

 小毬さんもぎゅっと僕のもう片方の腕を掴んだ。


 えと………まさか二人で僕の事を取り合う………とか? 恭介のマンガにそんなシーンがあったけ
ど、まさか………ねぇ?


「理樹っ」
「理樹くんっ」


 二人が同時に僕に呼びかけ、そして言った。




「明日から、覚悟しておいてくれ」
「わたし………頑張っちゃいますよっ♪」




 ………コレは、夢なのかな? いつかの世界みたいな、夢なんだろうか? あぁ、なんか意識が遠
のいてきた。そっか………コレはきっと夢なんだ。うん、そうに違いない。

 じゃなきゃ、僕なんかが………ねぇ?




 そして、僕の意識は闇に堕ちた。




――――――――――




 眠りから覚め、そこにあったのは………


「理樹くん、大丈夫? 辛かったらいつでも言ってね?」
「理樹。あたしがついてるから安心して休め」


 甲斐甲斐しく僕のお世話をする、小毬さんと鈴の姿だった。
 同時に悟った。コレは夢でもなんでもない、確かなる現実だということを―――――




「はぁ………完全に理樹をとられちまったぜ」
「理樹が………俺達の理樹が………」
「喜ばしいことだが………こうも寂しいと思っちまうとはな」


 部屋の片隅で、真人と謙吾と恭介がそれぞれ遠い目をしていた。
 さらに悟った。もう彼らにはなにを言っても通じないのだろう、と。




 僕の明日は………どうなってしまうのか?
 少なくとも、今まで以上に騒がしくなる。そう思えてならなかった。




‐Fin‐




あとがき 220,000HIT記念として、リトバスSSをお送りいたしました。 テーマはズバリ“ライバル宣言”です! 前回のキリ番SS 〜今日だけの恋人〜 の続編として執筆しています。 管理人のリトバスで一番好きなキャラが小毬と鈴なのです。 てなわけで、この二人を恋のライバルとして設定してみました。 一番仲の良い二人が恋のライバル宣言、しかも天然属性。 中々面白い展開じゃあ、あーりませんかw ぬふふふふふふふふふふふふふ………♪ ………失礼、取り乱しました。 もうキリ番記念はこのシリーズで行こうかなぁ、と思う今日この頃。 書いて見ると結構面白い展開になってきそうで………とりあえず検討してみたいと思います。 それでは、また次の作品でお会いいたしましょう。 感想・意見・リクエストがある方は、BBSまたはメールでどうぞ。
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