リトバスSS まだまだ続く物語(お正月記念SSその3) 時は、小毬の家に泊まった翌日、鈴のところに向かった理樹を見送った後まで遡る。 『もしもし、小毬ちゃんか?』 「おはよう、鈴ちゃん。今、理樹くんそっちに行ったところだよ」 理樹を見送り、駅を出た直後、小毬は携帯で鈴と会話を始めた。心なしか、小毬の声は上機嫌その ものであった。 『ん………なぁ、こまりちゃん』 「なに、鈴ちゃん?」 数秒の沈黙。 『理樹に………何もしてないだろうな?』 「ふぇ?」 突発的な質問に、小毬はついてこれてない。だが、すぐに意味を理解した小毬は、満面の笑みを浮 かべた。 「あっ、そっか〜。うんっ♪ 理樹くんと二人っきりで楽しかったよ〜♪」 『……………っ!!!』 声にならない鈴。どうやらショックを受けているようだ。 「えへへ♪ 理樹くんにたっくさん甘えちゃったよ〜♪」 『…………………』 「あれ? 鈴ちゃん、どうしたの?」 『うーみゅ………』 受話器の向こうから、鈴の唸り声が。何を離して良いのか分からない模様だ。 『なぁ、こまりちゃん』 「なに、鈴ちゃん?」 『理樹に、どんな風に甘えたんだ?』 「ふぇ? うーんとね………」 小毬は、昨晩のことを思い浮かべた。 「えっとぉ………理樹くんと一緒のお布団にもぐって………」 『……………』 「そしてピトッと抱きついたの♪」 『……………』 「理樹くん………優しく抱きしめてくれたの。えへへ♪ 理樹くんすっごく暖かかったよ〜〜〜♪」 今の小毬の表情は、まさに“幸せスパイラル”全開そのものであった。リトルバスターズの面々が この光景を見たら、誰もが唖然としたことであろう。 『うぅ………あたしですら理樹に抱きついて寝たことなんて無いのに』 一方で、鈴は凄く悔しそうな声で話す。鈴にとって、色んな意味で先を越された気分なのだろう。 「えへへ♪ ついでにほっぺたスリスリまでやっちゃいました♪ 理樹くんのほっぺた、凄く柔らか かったよ♪」 『なにぃっ!? ………うーみゅ、あたしだってやりたい………理樹とごろごろしたい』 小毬は弾け飛ぶほどの嬉しそうな声を醸し出し、対して鈴は、悔しさと切なさが入り混じったよう な声で呟いていた。 「でも、私にしてみれば鈴ちゃんのほうが羨ましいかなぁ………」 『んっ? どういうことだ?』 「だって、今夜は理樹くんと二人っきりなんでしょ?」 『なっ………!!!』 鈴は驚愕する。確かに、兄である恭介からはそのことは聞いていた。理樹には話していない。驚か せようと思っていたからだ。だが、小毬にも話してはいないはずだった。なのに如何して知っている のか? 「きょーすけさんが教えてくれました♪」 『……………………そうか』 物凄く背筋が凍えそうな声で呟く鈴。そんな鈴の声に、小毬はわずかな悪寒を感じた。 「り、鈴ちゃん? その………今はきょーすけさんのことよりも理樹くんのことだよっ!!!」 「む………そうだったな」 鈴の声が元に戻る。今ここにいない人物よりも、これから訪れる人物…しかも好意を抱いている人 が来る事のほうを優先させたのだ。 まぁ、とりあえずこの場はごまかせた様子だが、恭介がここにいたら一体どんな表情を浮かべただ ろうか? 「鈴ちゃん」 『なんだ、こまりちゃん』 数秒の間をおいて、一言放った――――― 「わたし………負けないよっ♪」 初めて言われる言葉ではなかった。何回も確かめられるかのように言われてきた言葉だった。なの に、言われたほうの身である鈴は、心の底から何かが燃え上がるような気持ちにさえなってきた。 だからだろうか、鈴も小毬に言い返した。 『………あたしだって、絶対に負けない』 力強い鈴の声を聞いたとき、小毬は何だか嬉しい気分にさえなっていた。鈴に負けたくない気持ち はウソではない。だが、一方で鈴に倒れて欲しくないというのも確かなのだ。 理樹の事も好きだが、親友である鈴の事も好きだから。 「りんちゃん」 『なんだ、こまりちゃん?』 「ファイト………だよっ♪」 『……………(ちりんっ)』 言葉は無かった。その代わり、鈴の音が確かに聞こえた。小毬にとって、その音だけで十分な返事 であった。 「それじゃまたね、りんちゃん」 『ん………またな、こまりちゃん』 ピッと電話を切り、空を見上げる。小毬と鈴、二人同時に行った行動だった。 空に浮かんだ雲が、ゆっくりと流れていった――――― ―――――――― 「………と、言うようなことを話したんだ」 「そう………なんだ」 僕は今、鈴と二人で寮へ戻るべく、川の土手を歩いていた。周りには人の気配は全然ない。まぁ、 おかげで色々と聞くことが出来たけどね。 「だから…なのかな? 昨夜の鈴のアレ………」 「とーぜんだ。こまりちゃんが甘えて、あたしが甘えないわけにはいかないだろ」 「そういう………ものなのかな?」 どうにもワケが分からず、僕は鈴に向かってそういった。すると、鈴は急に不機嫌な顔になり、 「むぅ………理樹はあたしよりもこまりちゃんに甘えられたほうが嬉しいのか?」 「いやいや、別に僕何も言ってないよね?」 「………理樹、もっとあたしに甘えて来い。えんりょすることないぞ」 「えーっと………何で?」 脈絡がなさ過ぎて、全然付いていけない。 「むっ、理樹はあたしに甘えたくないのか?」 「いやいや、なんかもうワケわからないから………」 うーん………なんかよく分からないけど、いつにも増して今日の鈴は…その、気迫が増してるって ゆーか……… 「うーみゅ………」 と思ったら、今度はなんか悩んでるみたいだし………なんか今日の鈴はコロコロ表情が変わってる ような気がするなぁ……… 「りきくーん、りんちゃーんっ」 学校のほうから僕たちを呼ぶ声。校門のところで、小毬さんが手をブンブン振っていた。 「理樹、こまりちゃんだ。行こう!」 「えっ、あっ、ちょっと………わわっ!!」 突如鈴ははじけ飛ぶような笑顔になり、僕の手を引いて走り出す。 あっ………考えてみたら、鈴がこんなことするのって………始めてかも。 「こまりちゃん、聞いてくれ! あたしも昨夜、理樹に目一杯甘えたぞっ!!!」 ………えっと、あのさ鈴。最初に話すことがそれ? 他にも何か…あるんじゃないのかな? 「ほわあっ! 鈴ちゃんもやるねぇ〜」 「とーぜんだ。こまりちゃんばかり先に行かせるわけにはいかないからな」 「わぉっ♪ 鈴ちゃんすごぉいっ♪」 「ふふんっ♪」 ………えっと、ところで後ろのほうで、今にも泣き出しそうな顔でこっちを見ている恭介たちのこ とは………どうしたら良いんだろう? えっと、とりあえず……… 「た、ただいま恭介………」 「理樹………よく帰ってきたな」 ど、どうしたんだろ恭介? なんだか一回り雰囲気が違う。なんかよくわかんないけど、とにかく いつもとは何かが違う! 「理樹………俺はもう………」 「きょ、恭介?」 ど、どうしたのさ? まるでもう僕の目の前から居なくなるかのような顔して……… 「そんな顔をするな。あまり俺を心配させるなよ」 「そ、そんなのっ………大体どうしたのさ恭介ってば!?」 絶対何かがあった。それは多分間違いない。でも、一体何が!? 一体……… 「理樹、一つ………頼みがあるんだが」 「な、何? 僕に出来ることなら、何でも言ってよっ!」 今の僕に出来ることは、恭介のお願いを聞くことだけだ。だったら、全力で叶えてあげないと。 「………俺を………俺を“お義兄ちゃん”と呼んでくれないか?」 ……………………はい? 「らしくないと思ってるだろう。だがな。俺は本気なんだ」 うんまぁ………それは何となく分かるけど。 「理樹。俺だってこんな事、何度も口に出したくはない。頼む。一度だけで良いんだ………」 「恭介………」 こんな恭介の顔………うん、そうだね。それが恭介の願いなら、僕は……… 「分かったよ、恭介………いや、おに―――――」 「なにやってるんじゃ、ぼけーーーーーーーーーっ!!!!!!」 どげしっ!!! 「ぐぼぉあっ!!??」 「えっ………り…ん?」 「理樹は………あたしが全力で守る!」 どこぞのヒーローみたく、決めポーズを取りながら鈴は言い放った。 「理樹、早く行くぞ!」 「え、ちょ………鈴!?」 鈴が僕の腕を絡めて歩き出す。 「ほわあっ、鈴ちゃん良いなぁ………うんっ、よぉしっ!」 小毬さんが気合を入れている。………なんか嫌な予感が……… ギュッ♪ 「うわっ!」 「なにぃっ!?」 「えへへ〜♪」 突然抱きつかれて僕と鈴は驚き、小毬さんはとろけるような笑顔で見上げてきた。 「行こっ、理樹くん♪」 「え、あ、うん………」 「むっ、理樹! でれでれしすぎだっ!」 「り、鈴? ちょっと…痛いんだけど………」 「じゃあ、私ももっとくっ付いちゃいますねっ♪」 ギュムッ♪ 「うわっ!?」 「むむっ!!」 こ、小毬さんって結構胸大きい………って、何考えてるのさ僕ーーーっ!!?? 「うーみゅ………なんだか凄く悔しい」 「えへへ〜〜〜〜〜♪」 どうやら、今年もまだまだ騒がしくなりそうだと、僕は思った。 そして、明らかに何かが変わる………いつになるかは分からないけど、そう思った。 〜おまけ〜 「なぁ、俺達は一体どうすりゃいいんだ?」 「とりあえず、部屋まで運ぶほかはないだろう」 「ううっ………理樹が……鈴が………うっ…うっ………」 真人や謙吾が見下ろす中、恭介はアスファルトに涙の跡を作り続けていた。 ちなみに―――――― 暫くの間、恭介が理樹に近づくたびに、鈴の威嚇や小毬の不安そうな表情が目立ったのだが、それ はまた別の話である。 ‐Fin‐
あとがき やっと正月記念SS完結しました。 もう正月どころか2月入ってますけどね(爆 題名の通り、まだまだこの物語は続きます。キチンと、完結させたいですね。 ………てゆーか、いつまで続くんだろう、ホントw この次の記念SSは、勿論あのイベントになります。えぇ、もう決定事項っす♪ ちゃんと当日にUPできるようにしたいなぁ、とおもう今日この頃です。 ………うん、本当にマジでそうしたい。 それでは、次回の記念SSにてお会いいたしましょう。 感想・意見・リクエストがある方は、BBSまたはメールでどうぞ。
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