To Heart2 由真SS
「可愛い花嫁さん〜Takaaki view〜」
誰の姿も見えない廊下を俺は一人で歩いている。 目的地はただ一つ。由真がいる部屋だ。 角を曲がって10秒も歩かないうち、少し大きなドアの前に立つ。 一回深呼吸。 扉を二回「コンコン」とたたく。 「由真、俺だよ。」 扉の向こうには、これから一生俺の隣を歩いてくれる女性がいる。 「どうぞ、開いてるわよ。」 かすかに、でも確かに彼女の声が聞こえる。 俺はドアを開けて中に入る。 後姿で目を閉じている。 俺が近づいていくと、静かに目を開けて、俺の瞳をみつめてくる。 「由真・・・。」 彼女の細い肩を抱いた。 力を入れればすぐに壊れてしまいそうな由真の肩。 普段は「これで勝ったと思うなよ〜!」なんて叫んでいるおてんばだけど、目の前にいる由真はおて んばの影を潜めている。 「どうかしら?」 彼女は、俺の手に自分の手を重ねて尋ねる。 「すごく・・・きれいだ。」 雰囲気を大切にしようと思って、俺は彼女の耳元でささやいてみる。 「そう・・・嬉しいわ。ありがとう・・・貴明。」 やっぱり素直に返事をする由真。 こういう由真も好きだな・・・。 「これじゃあ俺が見劣りしちゃうな・・・。」 そんな大人の由真に対して俺はどうだ? 彼女のパートナーを務められるだろうか。 そんな自分に苦笑いしてしまう。 「何言ってるのよ、十分にかっこいいわよ。」 由真は自信に満ちた顔をして、俺を励ましてくれる。 「私の夢が・・・叶ったのよ?」 まっすぐに俺をとらえる綺麗な瞳。 「ああ、そうだな・・・。」 そんな彼女が誇らしくて、俺も笑って返事をする。 俺も由真の夫として、もっと自覚を持たないといけない。 彼女を一生守っていと、俺自身が決めたんだからな。 そうだ。 今日は俺と由真の結婚式。 だから、今日式に来てくれる人たちには知ってほしい。 俺が由真を幸せにするんだって。 見守っていてくれって。 式が始まる10分前。 さっきの俺と同様に、扉をノックする人がいる。 「ふたりとも、そろそろ時間だよぉ。」 扉からほんの少しだけ顔を覗かせて、小牧さんが言う。 彼女は由真の親友。 うすピンク色のドレスが似合っている。 「もう、愛佳ったら。ちゃんと入ってきていいわよ?」 由真が彼女に言う。 「えぇ〜・・・だってぇ、2人の邪魔をしたら悪いし・・・。」 何を言うかと思えば、そんなことを・・・。 「ま、愛佳〜!」 由真の顔が一気に赤くなる。 「あ、ほらほら、可愛い顔が台無しだよ?」 由真とは違い、楽しそうな小牧さん。 「うぅ。」 結局黙り込んでしまう由真。 「じゃあ、私は先に行ってるね。」 ウィンク一つ残して、彼女は去る。 由真に対してではなく、俺に対して・・・。 理由はわかっている。 由真と婚約する前日。 俺は小牧さんに呼び出されて・・・告白された。 でも彼女には悪いが、その気持ちに答えてあげることはできない。 俺には、由真という大切な人がいるから。 もうフラフラしないと決めた俺は、ちゃんと断った。 だから、俺は由真を正面から受け止められる。 俺は彼女に言う。 「行こう、由真。」 「ええ。」 差し出した彼女の手をとり、イスから立たせる。 そして由真は、いつものデートをするかのごとく、腕を絡めてきた。 式場の大きなドアの前に立つ。 見るからに緊張している由真。 「緊張してるのか?」 由真の緊張をほぐしたくて、彼女に聞く。 涼しい顔して聞いている俺も、実は緊張している・・・。 「そんなわけないでしょ?」 強がる彼女がいじらしい。 俺は緊張している由真を抱きしめた。 トクン、トクンと聞こえる彼女の鼓動。 由真は安心してくれたのか、俺の首に手を回し、抱きしめあう。 「ごめんね。」 彼女が不意に謝る。 しかし、彼女は何も悪くない。 「気にするな、さぁ・・・いこう。」 俺は彼女に言う。 「うん!」 さっきよりも強く俺の腕を取り、由真が元気よく返事をする。 ドアが開かれる。 ここから、俺たちの未来が始まる。 俺たちは、新しい一歩を踏み出した。 緑の森を、風が吹きぬけた。 「新郎新婦の入場です。」                                    Fin.
あとがき こんにちは。フェニックスです。このたびはミラー作品を作ってみました。 貴明の登場からのスタートになっており少し短いのですが、 貴明視点のSS、いかがでしたでしょうか? 僕のサイトに由真視点のものがあるので、よろしければそれと読み比べてみてください。 このたび、お世話になっているシュンレイ様のお役に立てれば幸いと思い、投稿させて頂きました。
管理人(シュンレイ)からの感想。 フェニックスさん。投稿して下さってありがとうございます。 いやぁ、結婚式直前の2人。初々しいというかなんというかw 何時にも無くしおらしい由真がたまらないっす。 なるほど、貴明は愛佳から告白を受けてたんですね。 そして貴明はちゃんと断った、と。 なんだかんだ言ってケジメはつけられるようになったんですねぇ。 きっとこれからも幸せにやっていくんでしょう、きっと。
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